前回の近況報告より、もうすぐ1年。
この一年は人生で怒涛の展開がありすぎて、
毎日必死に生きていたら、あっという間に過ぎて行きました。
2013年に日本から飛び出してから
私にとって人生が毎年変わる5年でしたが、特にすごい一年だった‥。
ざくっと言いますと
というわけで、ツイッターでの読者様にはもう周知の事実かと思われますが、
2018年4月現在 前回の近況報告で出会ったボスについて、
アメリカはアトランタにて、イギリスのテレビ局の実写アニメーション系のコンセプトアーティストとセットデザインの仕事をしています。
まだタイトルの大々的な発表はされていないので詳しくはお伝えできませんが、幸運にもとても良いプロジェクトに出会えたと思います。
少し時間が経ち、全体観を見られるようになったので、イギリスの労働許可を得た顛末や、イギリスでのアメリカビザ申請など、今後海外での道を模索される方に役立つ情報もあるかと思い、忘れないうちに 折を見てブログを更新して記録したいなと考えています。
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というわけで今回は
イギリスでの映像系労働許可について
記事を書いてみようと思います。長いですが、海外就職の参考になれば!
ずいぶんと前のポストから時間が空きましたので、
ざくっと今の仕事に就くまでの自己紹介です。
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2000年代 多摩美グラフィックデザインで勉強し、家庭用ゲーム会社に就職
2013年 日本のゲーム会社辞めてイギリスにわたる。語学学校で特訓
2014年 イギリスのゲーム会社で働く/大学院受験
2015-2016年 英国立テレビ大学院(National Film and Television School)でプロダクションデザイン(映画美術)の修士課程で学ぶ
2017年2月 大学院卒業
2017年3月 現在の仕事に出会う(前回記事参照)
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どんな感じの絵描きかは、ホームページをご参照ください。
今現在はちょうどボスに出会った当時のポートフォリオに近いので(著作権にかかわる日本の会社での仕事はあげてませんが)その点でも参考になるかも?
さて、
イギリスやアメリカの労働許可(ビザ)を得るのは「キビシイ」とよく聞くかと思いますが
想像以上に厳しいことは身をもって体感しました。
大きな要素としては重要な順に
0.実力
1.スポンサー
2. 職種
3.学歴と英語力
4.コネクション、ネットワーキング
5.年齢
カテゴリーごとに、理由と所感を書いていきたいと思います。
0.実力
どの職種に就くのであれ、クリエイティブ職は総じて、相手が「この人を雇いたい」と思わせる実力が必要なのは確かです。日本と違い「育てる/未来への投資」採用ではなく、欧米では「使える/即戦力」採用なのが強い印象を受けます。今現在イギリスはEUの一員であり、1つのポジションをイギリスのみならずヨーロッパ中のイギリスで働きたい人を押しのけて雇ってもらう必要があります。彼らはビザの申請が必要がなく、人によっては2重3重国籍だったり、言葉の壁も低いため、日本国籍しか持っていない日本人に比べたら圧倒的に有利です。
残念ながら、インターネットの求人ではビザの有無を必ず聞かれる為、その時点でビザ保有者しか応募できない職種からは弾かれてしまいます。
私の場合はゲームから映画美術に職種を変えたこと、 一芸秀でるというよりは総合的な働き方をしてきたポートフォリオだったため、院卒後の就活はうまく求人のポジションにはまることができずに苦戦しました。後述しますが、セットデザインなどの映画美術はビザ発給難度がゲーム会社などより高い気がします。
今のボスに拾ってもらえたのは、私の絵がボスの求めていたこと、趣味に合致した為に起きたラッキーでもあります。ただ、ポートフォリオや、院で学ぶ間に準備してきたことはすべて役に立ったので、ラッキーを掴む為の準備をしてきてよかったです。
1.スポンサー
イギリスの労働許可を得る為には、多くのビザカテゴリーで収入と身元を保証するスポンサーが必要となります。ただし「スポンサーになってもらう」だけでなく「スポンサーになるためのライセンスを取得している企業」のみスポンサーになれるため、小さな企業などはそもそも応募対象からは外れてしまうのです!
なんと面倒なことに、スポンサーライセンスを持っていない企業は、ライセンスを取得する為の政府立ち入り検査の後、スポンサーになれるというまどろっこしい制度がありまして
仮に雇ってくれる意思があったとしても、
「スポンサーライセンス申請」
「ライセンス取得」
「労働許可申請」
という手順を踏まねばならず、
ビザ申請にたどり着くまでに膨大な時間が‥。
その時間と費用を捻出してもらうことを考えると、なかなかライセンス外の企業から雇ってもらうのは難しいのではないのでしょうか。また、そのライセンスも運用実態によって剥奪されたりすると聞きますし、ライセンスには期限が設定されています。
よって大規模会社や、海外に取引があるゲーム会社などは、スポンサーシップを持っていることが多いです。
さて、映画関連はといいますと、スポンサーシップを持っている企業は、ある程度の規模のアニメーションスタジオ、VFX会社やテレビ局などです。実写の映画美術では持ってるところを見つけられませんでした‥。
私の前の学年の外国人留学生は、卒業後某宇宙大戦大作映画の製図士として雇用されていましたが、学生ビザからスポンサーの必要なビザに切り替えることができず他の国に行ってしまいました。
その時点で「製図士」では就職がかぎりなく無理なことを理解したので、コンセプトにターゲットをしぼり、
かつ、最初は実写の映画美術を諦めてスポンサーシップのある企業を当たりましたが、結果は思わしくありませんでした。
院在学中の2年間で、講師の美術監督、実写映画のインターシップ先の人に必ずチームに外国人が居るか聞いていましたが「アメリカ人はいるよね」という答えや「配偶者がヨーロッパ人」という答えしか返ってきません‥。
半ば心が折れかけたころ、学生ビザ失効1ヶ月前に卒制でボスに拾ってもらうという奇跡が起き‥
ボスの作品のプロダクション会社に雇ってもらう形になりましたが、イギリスの多くの映画は、制作タイトルごとに短期のプロダクション会社を立ち上げるため、もちろんのことスポンサーライセンスはありません。
‥さて、どうしようと一生懸命相談したところ
イギリスには「俳優」「監督」「アーティスト」等を招聘する為の「映画専門のビザ発給をサポートする移民弁護士事務所」というものがあり、幸運にも、そこに依頼してもらうことができました!
その事務所が「スポンサーシップ」を保有しており、Tier5(短期労働)に関しては、事務所を通して申請すれば数ヶ月−2年の短期労働者扱いでの労働許可申請が可能だったのです。
しかしながら、労働許可を申請する前に、大ボスがいまして、
イギリスの専門職組合(ギルド)に「この人が絶対必要な人材である、イギリスで代替の人材がいない」ということを事前に申請&証明し、承認をもらわないと労働許可申請ができません。
専門性が高い仕事である必要があるため、エントリーレベル(ジュニア)では無理。また、弁護士費用とビザ申請費用を捻出してもらう必要があります。
私の場合は「コンセプトアーティスト」という役職ヒエラルキーの外に属する仕事であったこと、学生ビザの就労可能期間中に勤め先での信頼関係を構築できたことが幸いしました。
ギルドへの証明には、勤め先の働きかけで、自分では到底コンタクトを取ることが不可能な方に推薦の手紙を書いていただくことができ、パスできました。映画業界での職歴が浅いため、ここをパスするのが一番難しかったようで、許可が下りた時、みんなに「これで大丈夫だね!おめでとう!」と言われました。(正直泣いた)
他には、日本での職歴を含めた履歴書、大学院の卒業証書(NFTSはイギリスの映画業界では有名なため、よかったようです)大学院教授からの推薦書、元職場からの推薦書、どんな細かいものでも受賞歴や出版歴なども提出しました。
結果として、夏にはアトランタに移ることが決定していた為、大使館での申請が不要な「数ヶ月間の短期労働者」としての許可をもらいました。この場合、労働許可書さえあれば、飛行機到着後の入国審査時に特別なスタンプをもらうだけで入国できます。
ただし、労働許可書自体はTier5と同じものなので、手続き待ちの期間が短くなり、早く働き始められるという点のみが短期労働申請のアドバンテージだと思います。
私自身で動いたこととしては、
前述の通り、私の職場では、外国人労働者のビザや日本人への発給についての詳細はあまり知らなかったため、最初に雇用されてからしばらく経ってから、私の知りうる限りの情報を共有しました。
具体的には、今まで院で収集した情報、ビザ発給の可能性があるビザカテゴリー、可能性のないカテゴリー、前例、外国人の直面する問題等などです。実際の申請時に「とても役に立ったよ」と言ってもらえたので、自分で調べることが道を開く一歩になると思います。
スポンサー関連では、本当に色々な方に助けていただいて、進展があるたびに感謝の連続でした。
今思い出しても泣けてきます。
本当に、一人では無理でした。
そして、前例の知識や周囲のサポートあっての逆転劇でした。
2.職種
イギリスの場合、人材不足の職種であれば、雇用への道が比較的容易になります。人材不足の職種は、入管のホームページにリストになっていて、調べることができます。
なぜ容易になるかというと
-「イギリスで人材が確保できない」証明がいらない
企業では他に人材がいない証明として、一定期間求人を出した後ではないと、外国人を雇用することができないのですが、人材不足の職種は、この証明がいりません。
あやふやなのですが、私の職は求人の代わりにギルドの証明でOKなようでした。たぶん、どちらかが必要なのだと思います。
-最低給料ラインが低い
人材不足の職種以外では、外国人を雇用する為の最低給与額が決まっていて、だいたいマネージャクラスかシニアクラスでないとクリアできない額面が要求されます。人材不足の職種は、ジュニアクラスでもクリアできる給与額が職種ごとに設定されて公表されているので、エントリーレベルにもチャンスがあります。
これから職種を模索する方や、やりたいことが決まっていなくて留学される方などは、学校に入る前にどんな職種が人材不足なのかを調べることで、イギリスでの就労許可が下りる可能性がグンと上がると思いますよ!
3.学歴、職歴と英語力
実力主義の海外ではありますが、ビザ申請時には機械的に学歴、職歴、英語力証明が必要になります。
イギリスか英語圏の大学以上を出ていれば、卒業証書が英語力と学歴の証明書になります。
海外の大学出か、それ以外の学歴であれば、
ビザ申請前に英語能力証明であるIELTSを受験し、一定レベル以上をパスする必要があります。
IELTSの有効期限は2年で受験に2万円以上かかるので、英語圏の学校をでる方が卒業証書の有効期限がない分、いちいちビザ申請ごとに受験する必要がなく、楽です!
また、学歴は国によってはビザ申請時のポイントシステムで役立ちます。
ポイントシステムは何かというと、ビザ発給にはxxポイント必要で、収入がx円以上なら△ポイント、大卒で◉ポイントなどを加算して基準をクリアしないとビザが発給されないという仕組みです。
ということで、学歴が高いほどビザ取得に必要なポイントに達しやすくなります。
職歴、デモリールは就活時にもちろん、アピールポイントになります。
ただ、日本の職歴を履歴書上だけで評価してくれるには
-外資系企業に勤めていた
-グローバル企業に勤めていた
-有名タイトルに関わっていた
などが必要かと思います。
周りをみて、日本で働いてから海外に出た方の役職は、日本での役職より1−2段階落ちてからのスタートが多いように思います。
やっぱり、言語と文化の壁をこのへんで感じます‥。
4.コネクション、ネットワーキング
海外の就活は、身寄りもなければ学校つながりの基盤もないため、ネットワーキングが重要になります。
私は、その手段として院の入学を選択しました。
インターンシップが盛んだったり、無給でもランナーとしてまずは業界に飛び込める環境がイギリスにはあるので、じっくり時間を使ってネットワークと広げることは就活の重要な要素だと思います。
ビザの要件はクリアする必要がありますが、私もいまだ院や同級生から
「〇〇(ビッグタイトル)の製図士をうちうちに募集してるらしいから興味あったらxxにメールして」
というメールをもらうので、院に行ってよかったなと思います。
5.年齢
年齢は職業の上下関係に日本より影響しないとは思いますが、外国人の就職として重要だと思います。
まず、イギリスはワーキングホリデー制度があるため、30歳以下は2年間の(ほぼ)無条件就労許可が下りる可能性を持っています。はっきり言ってウォンカさんの金のチケット並みの威力です。
私も30歳でこのビザに当選し、語学学校からダイレクトに現地の中堅ゲーム会社でリードアーティストとして働くことができました。
ビザあるなしの就活の厳しさは、段違い。
両方経験したので、それは断言できます。
また、前述のビザ申請時のポイントシステムでは若いほどポイントが高くなったと思いますので、その点でも有利になります。
あと、やっぱり英語習得は若い方が有利だとしみじみ‥
ただし、わたしも30で海外に出たので、遅いからといってダメではないと思います。
日本で経験を積んだことは、体に染み込んで今の職にも役立っていますし、
日本と海外の働き方を両方熟知して動けるのは、
今後日本に帰っても、海外で働くにしても、役に立つのかなと思います。
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以上、ざっくりとした労働許可の所感でした。
日本、イギリス、アメリカで働くことができているのは
私の人生にとってとっても幸せなことだと思っています。
ビザの情報は年々更新されるため、ここに記述はしていませんが、
イギリス政府のホームページで大概のことは見つけることができます。
https://www.gov.uk/apply-uk-visa
調べてみることはタダですし、調べたことで覚えらえることも多いので
興味がある方は、覗いてみてください!
この記事が、ちょっとでもお役に立てれば幸いです。
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